「如何にも、余はかつて一国の主であり、豊穣の王と呼ばれたエイダンである……この姿ではそうは見えぬだろうが本当の話だ。本当であるぞ?」
「やれやれ、仕方のない奴である……ディラン、もうその辺にしておけ。これ以上はオーバーキルになる」
「無礼者、軽々しくわれをミッキーと呼ぶでない」
バドレックス♂寄ミック(Mick)
れいせい 昼寝をよくする
年齢:約1400歳(精神年齢40~50代、肉体年齢9~10歳程)
身長:139cm
一人称:われ(王として振る舞う時は余)
好物:チーズケーキ、チーズバーガー
かつてガラルの雪原地帯を治めていた王。現在はディランと共に冒険団拠点(ギルド)で働きつつ穏やかに暮らしている。
聡明で気品と威厳に溢れており、しばしば王としての顔をのぞかせる一方、マイペースでぽやぽやした面もあり、天気の良い日はよく昼寝をしている。特技は何処でも眠れる事。
ポジティブで寛容、親しみやすい雰囲気だが礼儀を守らない者には厳しく、軽く扱われる事を嫌う。
好奇心旺盛で知識を吸収するスピードも早く、現代にも即座に順応した。口調もやや古風ながらイマドキの言葉も難なく使いこなす。
慈悲深く、子供や少年少女を見守る目は暖かい。節度を守れば敵に対しても優しさを見せ、裏切った相手に対しても完全に憎しみを抱いている訳ではない。
約1400年前のまだガラルがいくつかの国に分かれていた時代、現在雪原が広がる一帯の国王として君臨していた“豊穣王エイダン(Aodhan the Bountiful Harvests)”当人。
不思議な力を持つガラルの土着民族の生き残りで、現代のポケモンが魔法に頼らなければ使えない力を魔法なしで使いこなせる。特に癒しや恵みの力に長け、あらゆる傷や病を治す秘薬や植物の成長速度を上げる薬等を作り出す事ができた。
平穏な日々を送っていたある日、不老不死の秘薬を作れる疑いをかけられ家臣達の裏切りにあい、愛馬共々追い詰められてしまう。そして命を狙われるも彼にしか使えない豊穣の力を惜しまれ、雪原の奥地に封印された。
それから幾年月が経ち、雪原の調査にやって来たウォルター達の手で封印を解かれ、色々あって愛馬との再会にも協力してくれた彼らに感銘を受け、恩返しとして時々チームラッシュの活動にも手を貸すようになる。
封印が解かれた直後は一部の記憶を失っており、名前も覚えていない状況だったので暫定的に「ミック」と名付けられるが、記憶を取り戻した以降も気に入って今の名前で通している。
復活してからは愛馬の力があっても全盛期の力を使えない。秘薬はもう作り出せないが、本人はもう自分の力が原因で争いを起こしたくないと肯定的に受け止めている。
とはいえ豊穣の王としての非現実的すぎる功績に虚構説が唱えられ、教科書からも記述が消えようとしている現状は非常に不服で憂いており、何とかして豊穣王エイダンの存在を世間に認知させようとしている。
封印される時は壮年期で、外見も相応に歳を取っていたが、直前にディランが不老不死の秘薬と信じてやまなかった若返りの薬を飲ませた事で少年の姿で復活した。
ディランとは王だった頃からの絆で結ばれている。かつて国を荒らし回る盗賊だったディランを成敗し、配下に置いて以来絶大な信頼を寄せられている。
現在も荒っぽい彼に手を焼くところはあるが、息子同然に可愛がっている。
冠の雪原におけるミックとディラン関係の話
[あらすじ]
雪原の調査を任されたウォルター達チーム・ラッシュ。6人はドンの親戚の家(雪原で一番偉い一族の屋敷)に滞在しながら遺跡や大木の調査に向かう……。
この間にドンが親戚達と一悶着ありつつ、キョダイマックスに頼らない強さを追い求める決心をしたりもするが、また別な話。
[本編]
「樹氷に覆われた峡谷にある大木の様子を見に行って欲しい」との依頼を受けて現地へ向かった一行。何の変哲もない木に最近落雷が落ち、以来その木から謎の声が聞こえるらしい。
大木を見たトレヴァーは木に何かしらの呪いが掛けられている事を見抜き、時間の経過と落雷のショックで効力が弱まっていると推測。あらゆる怪異を無効にできるウォルターの力があれば秘密が分かるかもしれない__とウォルターが大木に触れると木の裂け目から美少年が現れた。
介抱された少年は最初は大昔の言語しか話せなかったが、驚くべき順応性で数日後には片言ながら話せるようになり、身の上を語る。
自分はかつてこの地に暮らしていたが、ある時何者かに呪いをかけられ木の中に封印された。それ以上の事は覚えておらず、自分が何者なのかを知りたい__。
トレヴァーとグロリアから「ミック」の名をもらった少年は彼の記憶や現地の歴史書から大昔この地を治めていた伝説の王「豊穣王エイダン」と推測される。もし王ならば伝説のような癒しと実りの力を扱えるかもしれない、と無茶振りされてミックは能力を発揮してみるが、農作物を一瞬で豊作にできる力はせいぜいニンジン一本成長させられる程に過ぎない。
彼は本当に王だったのか?ミックの過去を調べつつ、並行してウォルター達は古くからこの地に現れる黒馬の怨霊ー主人を裏切った敵を探して今も彷徨い続ける悲しき亡霊ーの調査も命じられ、怨霊探しにも奔走していた。
黒馬の怨霊が村を襲撃した時、怨霊を目撃したミックは僅かに記憶を取り戻し、黒馬がかつて絶対の信頼を置いていた配下に似ていると語る。この黒馬ならミックの事も何か知っているかもしれない。
かくして怨霊を追う一行はその過程で「怨霊がまだ生きている事」「霊がかつて伝説の国の居城だった遺跡(カンムリ神殿)を拠点としている」事を知り、カンムリ神殿へと向かう。
神殿に現れた黒馬は霊体ではなく、肉体を持つ本来の姿でウォルター達と対峙する。痩せこけた姿に血走った目は気の遠くなる程裏切り者_主人の敵を探し求め、憎悪と復讐心で狂気に囚われている姿そのものだった。それ故に目の前にかつての主人がいるにも関わらず、黒馬はミックを敵と認識して襲いかかる。
暴れ狂う黒馬と一行が戦う最中、ミックは黒馬とぶつかり合った衝撃で記憶が全て蘇り、自分が本物の豊穣王エイダンだと思い出す。かつての配下ディランの目を覚ませるのは自分だけだ、ミックは一行の力を借りながらディランを追い詰め、ボロボロになりながら優しく彼を宥める。
すると……狂乱していたディランが少しずつ落ち着きを見せる。ミックの言葉に耳を傾け、絆の証だった手綱を見せられると漸くディランは少年がかつての主人だと気付き、今まで悪夢を見ていたように彼の胸に縋り付いて泣き出した。こうして怨霊は正気を取り戻せたのだった。
再会した主従は今回の騒動に力を貸してくれたラッシュ面子に感謝の意を示し、以降しばしば彼らの活動にも手を貸すようになる。
一行の雪原の調査が終わった後は雪原を離れ、ウィンドン郊外の町で暮らしながら探検隊本部で働いている。