シノノメ


「フフフ、忍ぶレディと書いてシノノメとはこの私の事。それで、私にどの吸血鬼を殺れと?」
「少年に危険すぎる世界はまだ早い、せめてこの私より強くならないと私の手伝いなんて無理デース」
「やはり貴様は吸血鬼……悪いがそれだけで生かしておけない理由デス!」


☆ゲッコウガ♀シノノメ(Shinonome)
すなお 打たれ強い
年齢:23歳
身長:164cm
一人称:私
好物:クネル(フランス料理)


ウィンドン在住のカロス系貴族、ポーシャール家の養子の令嬢。
本名は本名エグランティーヌ・クロエ・シノノメ・デュ・ポーシャール(Églantine Cloé Shinonome du Pauchard)で、ファーストネームを嫌って公にはクロエの名前で通している。シノノメは亡き師匠から貰い受けた名前で、自身の裏の顔を知っている者やそれなりに親しい相手にしか呼ばせない。
貴族の間では病弱であまり屋敷から出ず社交界にも滅多に現れない、ミステリアスな深窓の令嬢として知られているが、コンプレックスである特異な見た目(ボサボサの髪に血のように赤い目、大理石のように白い肌と牙を持つ)や裏の顔を知られたくない為に本人が流している噂であり、家族にもその設定で通している。

その裏の顔は忍者装束を身にまとい、夜な夜なガラル中のヴァンパイアを始末して回るガラル最強の吸血鬼(ヴァンパイア)ハンター。 自身も片親が吸血鬼の混血(ダンピール)で、前述の容姿はその為。
かつてカロス在住の貴族だった頃、目の前で実母を殺した吸血鬼の父親に激しい憎悪を抱いており、仕事をこなす傍ら父親の行方を追っている。ダンピールの血の影響もあり、父親のみならず全ての吸血鬼に対して強い敵対心を持つ。
今やガラルの吸血鬼はシノノメを恐れるあまり大っぴらに暴れなくなり、果ては忍者そのものに恐怖心を抱くほどになっている。

陽気で自由奔放、それでいて情に流されないドライな性格。無意識に相手を振り回すタイプ。己の信念を意地でも貫こうとする一方、理屈で返されればそれに従う素直さを持つ。また、逆に自由奔放に縛られている節もある。
吸血鬼ハンターの時は残虐さが増した冷酷な顔を見せる。
復讐者・ダンピールとして過酷な宿命を背負っているため他人を巻き込みたくない、自分を知られたくない気持ちが強く、他人に対して一定の距離を取りがち。完全に心を許している相手は少なく、今の家族にも自分を悟られないようにしている。
極東文化が大好きで、趣味は浮世絵や骨董品の収集。侍や忍者に憧れており、幼い頃に見たカントーの時代劇に勇気付けられた事が彼女の嗜好に大きく影響している。

ウォルターとは彼が強敵に敗北して落ち込んでいる時、知り合いのトレヴァーを通じて知り合った。
彼の熱意に負けてバトルの師匠として戦い方を教えており、父親への復讐しか考えられなかったシノノメ自身にも少しずつ変化が表れている。
ウォルターから師匠として尊敬されるだけでなく、異性として好意を持たれている事に満更でもないが、まだ未熟な少年の気持ちには答えられないと考えている。

変幻自在な動きで相手を翻弄し、的確に急所や弱点をつく容赦ない戦い方をする。
服の中に暗器をたくさん隠し持っており、中でも木製と鉄製の手裏剣を愛用する。この手裏剣に水の力をまとわせて水手裏剣として投擲する事も。
吸血鬼のみならずバトルの場では誰が相手でも容赦しない。弱点は強い臭いの植物(バジル、ミント、パクチー、ニンニク等)。

ドレスの前方部分は半透明のレース。
本人はとしてはスカートやドレスを気に入っておらず、ラフで動きやすい格好を好む。


【過去について】

生い立ち

シノノメ__当時はクロエと呼ばれていた__はカロスのキナンシティで生まれた。家は街でもそこそこの地位を持つ貴族で、女主人のゲコガシラ、エミリーの一人娘として母親や使用人から可愛がられて育った。父親の存在はあまり考えたことがなく、このままの生活が永遠に続けば良い。そう彼女は思っていた。

ところが彼女が6歳となったある日、平穏な生活は終わりを告げる。
満月の夜、物が倒れる音やガラスが割れる音、叫び声で目が覚めたクロエは、何事かと音のする方向へ向かう。すると廊下に血だらけで使用人達が倒れていたのである。
驚くクロエに蚊の鳴く声で使用人達が先へ行くのを制止するが、それを聞かず不安に駆られた彼女は大広間へと駆け出した。

そして目にした光景は、首や胸を鮮血で染め上げる母親と、母親をボロ布のように虚無的な目で乱雑に持ち上げる白く美しいサニゴーンの青年が月光に照らされた姿。青年の口元には血が滴っていた。

突然の出来事に言葉を失うクロエ。すると青年が彼女を見やり、「お前はエグランティーヌか」と好奇と嫌悪の目で見つめてくる。
エグランティーヌは彼女のファーストネームである。なぜ彼が知っているのか、少女が疑問を口にすると青年は礼儀正しく自己紹介し、答えた。私は悪名高い吸血鬼で、数百年前に吸血鬼として蘇ってからあらゆる女を襲っていたのだが、その一人が子を宿し、それがお前となったのだ__。

子を成すつもりはなかったと語るその吸血鬼は実子だけでなく、彼女の母親までも忌み嫌い、始末すべく満月の夜に襲撃をかけたのである。そしてエグランティーヌはせめてもの情けとして父親が命名した名前で、混血(ダンピール)として忌み嫌われ生涯「孤独」を味わうようにと野ばらの花言葉から付けられたものだった。

恐怖に怯えるクロエに吸血鬼は容赦なく襲いかかり、額に傷をつける。
一方の彼女は逃げ惑う時に今まで自分の中に眠っていた力を解き放つ_それはダンピールの力であり、吸血鬼と同等のスピードにパワーだった。目にも留まらぬ速さで仕掛けられる攻撃を寸前でかわし、6歳の子供が持ち上げられないような燭台を両手に構えると、クロエは吸血鬼の顔面めがけて振り回した。この思わぬ反撃に吸血鬼は面食らい、不本意ながら去っていった。 そして全てが終わって少女が血塗れの母親に駆け寄った時、既に母親は事切れていた。

ガラルに渡って

身寄りのないクロエは母方の親戚ポーシャール家に引き取られることになり、カロス地方からガラル地方に移る。その際名前も引き取られた先のポーシャールとなった。
事情を知らない家族がファーストネームで呼ぼうとした時、クロエは激しく拒絶した。忌むべき父親から貰った名前を彼女は現在に至るまで嫌悪するようになる。

移住したばかりのクロエは優しい家族の元で心の傷を癒しながらレディとして可憐に成長する。
ガラルで暮らすうち、クロエは最愛の母を失ったショックから少しずつ立ち直ったものの、心の中にはなにか黒くおぞましいモヤモヤがくすぶっていた。しかしその正体は分からないまま3年が経過した。

クロエが8歳になったある夜、家で大規模なパーティーが開かれた。
家族がめかしこんで舞踏会に参加する中、社交界に行ける年齢ではないクロエは家の一室_図書室で絵本を読んでいたのだが、その時窓から吸血鬼が侵入する。
吸血鬼は明らかにクロエを獲物と見ていた。襲いかかる吸血鬼にクロエは叫びながら助けを求めるが、部屋が遠すぎて家族もそれ以外のパーティーの参加者も全く気付かない。
そんな絶望的な状況に立たされた時、再びクロエの中のダンピールの力が火事場の馬鹿力として目覚める。凄まじいスピードと水のパワーで吸血鬼を撹乱すると本棚を倒して押し潰し、身につけていた木製の髪飾りとブローチで吸血鬼の胸を深々と刺したのだった。
吸血鬼が息絶えるのを目の当たりにした時、クロエは今までにない高揚感と共に生まれついての使命ー吸血鬼を根絶やしにするーを感じ取った。自分が生まれたのは吸血鬼を殺すためなのだ。幼い少女はこの時から自らの運命を悟ったのである。

師匠との出会いと別れ

それからの彼女はレディとしての嗜みを覚えつつ、吸血鬼を倒せるくらいの強さを求めて鍛錬に励むようになる。
凶悪な化け物と戦う過酷な運命を奮い立たせ、心の拠り所となったのは忍者だった。ガラルに移り住んでから暫く塞ぎ込んでいたクロエがテレビでカントーの時代劇を目にして依頼、様々な術や空手で悪を打ち破るシノビにどんどん惹かれ、次第に自分の戦闘スタイルも忍者の姿を取り入れる事となったのだ。

吸血鬼ハンターの師匠であるルカリオのルシアンと出会ったのもこの頃である。元々ルシアンはクロエを吸血鬼だと思い込み、公には病弱で学校に行かない彼女の家庭教師として屋敷に潜り込んだのだが、吸血鬼を倒す側と分かると幼い少女にバトルや吸血鬼退治のノウハウを教え込んだのである。
ルシアンもまた家族をクロエの実父に殺されており、復讐心から吸血鬼ハンターとなった青年だった。そのため彼はクロエの心にくすぶるモヤモヤの正体が「憎しみ」だと即座に言い当てた。
母親を惨殺した父親が憎い_その感情に気づいたクロエはますます鍛錬や吸血鬼退治に励み、気付けばクロエはルシアン共々ガラルの吸血鬼から恐れられる存在となっていた。額の傷に誓って母親の仇を討ち、吸血鬼も根絶やしにしてやる。

クロエが吸血鬼退治を始めたのは11歳の頃からである。それから8年間、彼女はルシアンと共に夜のガラルを駆け抜け、誰にも知られないうちにガラルの平和を守っていた。
その間にもクロエは彼から「シノノメ」の名前を貰ったり、より親密な仲となり師弟関係を超えて互いに恋愛感情を抱くようになる。
また、トレヴァーやオーレリアとはこの時期に出会っており、それぞれ吸血鬼に襲われていたところを助けた事で知り合った。勿論正体については口止めしている。

ルシアンはある夜シノノメと約束する。「全てが一段落したら共に暮らそう。君はこの家から出て自由になるんだ」
しかしその約束は果たされず、シノノメが19の時にルシアンは鎧の孤島で吸血鬼に殺されてしまう。
その吸血鬼はすぐにシノノメが仇をとったが、数少ない理解者であり、身も心も捧げる程愛していた唯一の存在を喪った彼女の喪失感は計り知れないものだった。
ルシアンの葬式が終わってから数ヶ月、ろくに物も食べられず、自室に籠って悲しみに打ちひしがれる日々を過ごすシノノメだったが、やがてその喪失感を復讐心や闘争心で埋めるかのように今まで以上に吸血鬼退治に精を出すようになる。孤高の存在に他人は要らない。ルシアンは過去の人なのだ。彼の形見のマフラーをなびかせながら己の宿命をこなすべく、再びシノノメは夜のガラルを駆け回る日々を送り始めた。

今のシノノメ、と弟子

一人孤独な戦いを繰り広げていたシノノメは、ある時知り合いのトレヴァーから強敵に敗北して落ち込んだ少年を慰めて欲しい、と電話を受ける。
始めは断ろうとした彼女だったが、その少年ウォルターに何かを感じて彼の頼みである弟子入りを最終的に受け入れる。ウォルターから感じた「何か」とは、彼が怪異を無効化する反体質によるものか。或いは彼が幼少期に親を失い、孤独感を感じて育った事や、親しい者の形見の赤い布を身につけている事へのシンパシーか。それとも彼の心の中にある「もう二度と凄惨な目に遭わないだけの強さが欲しい」という闇か。
ともあれ、彼の精神力の強さや粘り強さに惹かれたシノノメは何かとウォルターを気にかけ始め、ある時は師匠として、ある時は姉のように向き合い、時には自分の中に生まれた母性愛で彼を癒した。そして彼にも吸血鬼ハンターの事とダンピールである事を打ち明ける。

ウォルターが自分の理解者となり、愛情を向けてくれる事は少なからずシノノメの心の空虚を埋めていた。それをシノノメは感じているが、まだ若い彼の気持ちに応えられないのも事実である。
シノノメもウォルターに愛情が足りないのを知っており、私が彼を愛するしかないとぼんやり考える程彼に好意を持っている。だが今はまだ師弟のままでいるつもりだった。
果たして二人が結ばれるのはいつになるのか。それはまた少し先の話である。