Great minds think alike.

 キルクスの街のクリスマスマーケットは昔からガラルの五大クリスマスマーケットの一つに数えられ、クリスマスが始まる一ヶ月前から数週間盛大に行われる。
 古い建物が立ち並ぶ通りや広場が出店という出店で埋め尽くされて一層賑やかな様相を醸し出している中を見上げれば、眩しすぎる程に煌びやかなイルミネーションが冬の鬱屈とした鉛色の空を覆い隠すように瞬いている。古の時代から街を見守っている寺院等の建物はここぞとばかりにビビッドなライティングで彩られ、どこもかしこもクリスマスの前祝いとして派手すぎるくらいに盛り上がる、そんな催し物が歴史的価値の高く、観光地としても有名な街で開催されるのだから当然街の外からも多くのポケモン達がクリスマスマーケットを見物しに訪れ、それがキルクスのクリスマス前の風物詩と化している。
 当然そんなポケモンやら出店やらでごった返す場所へ足を踏み入れれば、たちまち五感は雑踏、ざわめき、出店の店員の客寄せ、色とりどりの贈り物や食べ物、ストリートミュージシャンの音楽、小型メリーゴーランド、電飾で飾り立てられた巨大クリスマスツリーに飲まれてしまう。
 そのため、混沌の文字で表現しても過言ではない空間に気圧されてトレヴァーがすぐ隣にいるエリックの呟きを聞き逃すのは当然の事だった。
「何か言ったか?」普段より大きめな声でトレヴァーが呼びかける。
「まだ握られた両手が痛いって言ったんだ」
 ただの独り言さ、と付け加えてエリックも負けじと声を張り上げる。明かりが絶えない場所とはいえ、日没をとうに過ぎた時間帯でも彼の白髪はよく目立つ。長身なのもあるが、雑踏で見失わずに済んでいるのはもっぱら膨張色による理由が大きい。
「それは本当に悪かった、許してくれ」
 喧騒の中にトレヴァーの声が響く。数十分前にキルクスの街の一角で待ち合わせし、数週間ぶりに視界にとらえられた愛しい相手の姿に思わず感情が昂り、出会ってすぐにエリックの両手を取った事自体は悪い事ではない。今の関係になって数年、まだ公にはこの事をひた隠しにしている状態で、抱きついたりキスする事を避けた結果だ。問題は「会いたかった、会いたかった、会いたかった」気持ちを手に込めすぎた事である。思わずきらめく瞳でエリックの顔を眺めるうち、目の前の翡翠のような瞳が歪み、「痛い!」の一言が聞こえた瞬間から今に至るまで、トレヴァーはこの出来事を悔いているのである。
 折角久々に会えたのだから、気まずい関係でありたくない。エリックとはぐれないようにしながらきょろきょろとトレヴァーが周囲を見回す。これだけ物で溢れかえっているのに、彼が機嫌を直してくれそうなものが見当たらない。伝統的な工芸品とハンドメイドのジュエリーはエリックのセンスに合いそうなものがないため無し、食べ物はどうだろうか、数ある匂いから特に美味しそうな匂いにつられて視線を向けた先には、クリームシチューが湯気を立てている出店があった。
「エリック、何か奢るけどどうだ?」
「いや、今食べたら夕飯が食べられなくなる」
 それもそうだ、少食のエリックにとってはカップ一杯分でもそれなりの量となる。中途半端な時間に飲み食いすればこの後の豪華なディナーを楽しめずに終わる。なんて浅はかだったのかと心中で自分を責めながら、やや肩を落としてエリックを追うトレヴァーの足音が虚しく雑踏に消える。加減を知らない電飾の光やクリスマスソングの弾き語り、家族連れの笑い声が今はナイフのように体に突き刺さる。栄えた都市で生まれ育った影響で賑やかな場所を苦にしない体質ではあるが、心が乱れている時は静かな場所にいたいものだ。
 相変わらず通りはポケモン達でひしめき合っている。氷点下まで冷え込む寒さにも関わらず、こうも皆寒さをものともせず通り過ぎていくと不思議な光景に見える。種族を考慮しなくてもこれだけ密集していれば体温で温かくなるからとか、温かい飲食物があるからとか、もっともらしい理由がトレヴァーの頭の中にぼんやり浮かんでは消えていく。そして何より……大切な相手と一緒にいる事程心が温かくなるものはない。
「トレヴァー」
 声が耳に入ったと同時に、気付けばトレヴァーの目の前には同じ背丈くらいの他人の顔があり、あっと思った瞬間には左手首を掴まれてエリックに肩を寄せていた。ほんの数秒の出来事に目を白黒させながら、どうやら誰かにぶつかりかけていたのを少しずつ理解し、思わずエリックの方を向く。
「ありがとう……助かった」
「ふふっ、僕がいた事に感謝するんだな」
 視線の先の得意げな表情に安堵の白い息が漏れる。いるのはいつものエリックだ、彼をよく知っているからこそ、今の今まで彼の機嫌を不安視していたのが杞憂だった事がその顔から伺えた。と、気が緩めば別なことに意識が向く。掴まれた左手首がじんわりと痛むのだ。
「君の手を握りすぎた報復か?」
「そんな訳ないだろう」呆れ顔のエリックが息をついてもそこまで白くはならない。「それに、あの時僕だって君の顔を見た瞬間に同じことをしようとした。先手を打たれただけさ」
 それだけで充分だった。手首の痛みだって、そこまで強く響かないところにエリックの優しさを感じて表情が柔らかくなる。
「痛い程思いが伝わったんだから、それに報いるべきだってなっただけだ……それがなくても手を出してたけど」
 ここが諸々がひしめき合うところでなければ、トレヴァーは今すぐにでもエリックにキスしていたところだった。トレヴァーだって、エリックが雑踏にさらわれかけたら同じようにしていただろう。考えることは同じ、なんとなく嬉しくなったトレヴァーから言葉ともつかない小さな声が漏れる。
「予約しているレストランはこの先だ、もう少し歩くから着いてきてくれ」
 もう先程の虚しい足音もなく、軽やかにトレヴァーはブーツの音を響かせる。少し心が明るくなっただけで街中が輝いて見えるのだから単純なものである、クリスマスプレゼントを買い求める者やイルミネーションに見とれる者のシルエットが心地よく目に映る。時間が指定されている目的地が無ければもっとこの雰囲気を、クリスマスマーケットの賑やかさをエリックと楽しんでいたかったのに、と考える余裕すら生まれた時、その目にひときわ輝くものが入った。金細工の出店に並んだ数々の商品の中で、まるで出会ったのが運命のように感じたもの。一目惚れとまではいかなくても、見た瞬間込み上げるものがあった。受け取ったエリックの顔や、それを使うエリックの日常の一幕が瞬時に思い浮かび、本能がこれだと告げる。
「少しだけ買い物しても良いか? 欲しいものがあって……」
 ああと首を縦に振るエリックを横目で確認するな否や、トレヴァーの体は雑踏の隙間を縫って赤い屋根が連なる木製の出店の前へとたどり着いていた。彼への贈り物は他にも用意していたが、きっとこれが一番喜ぶに違いないという確信があった。手に取る根拠はいくらだって思いつく。
 エリックの翡翠の瞳がとびきり丸くなるところを想像して、トレヴァーは手元の金細工のそれを見下ろしてにっと笑った。

 

 予約してもこれなのか、とエリックがため息をつく。彼が案内したレストランはキルクスの街の中でも評判が良く、それでいて普段はそこまで客のいない穴場のような場所だといつぞやに自慢げに語っていたそこは、トレヴァーもある程度覚悟していたとはいえ満席に近い賑わいを見せていた。
「ホリデーシーズンでも七割くらいしか席が埋まらなかったのに、テレビがここを取り上げた所為で……!」
「良いんじゃないか、あまりにも客が来なければ潰れるぞ」
「それはそうだけど……」
 テーブルを挟んで向かい側にいるぶうと頬を膨らませるエリックを宥めながら、トレヴァーはほのかにレモンの香りがする水で口を湿らせる。ゆったりした空間は無くとも、語らうことはできる。家族連れやカップルの声、通路を忙しなく動き回るウェイターや厨房から聞こえる威勢の良い声がカジュアルなインテリアの目立つ店内に立ち込める中でも普段通りに話を切り出したことで、ようやくエリックも不満げな表情を解いた。
 話題は当たり障りのない天候の話に始まり、お互いの近況、そして来たるクリスマス当日のスケジュールへとくるくる変わった。その間にも長い事店内に充満する美味しそうな匂いが鼻腔に入り続けているが、実物が目の前に来る気配はまだ無い。
「それで、今年のクリスマスも実家で家族と過ごす訳か」
「毎年そうだからな。例外もあったけど、基本的には両親や親戚たちと集まってパーティーをして、翌日のボクシングデーには働いてくれた使用人達を労う。その習慣がずっと染み付いている」
 “例外”の言葉を口にした時にエリックが不思議そうに首を傾げたのをトレヴァーは見逃さなかったため、即座に付け加える。
「家族の元へ帰らなかった年が二回あって、その時はグリさん……グリニッジ師匠と過ごした」
「パフォーマーの修行をしていた時だな」
 パフォーマーとしてのトレヴァーも追っている熱心なファンには最低限だけで伝わった。師匠のグリニッジは今は引退しているが著名なパフォーマーで、未熟なトレヴァーに様々な技術を叩き込んだ青いデンジュモクの男である。エリックも彼のことは昔から知っており、よく弟子になれたなと当初は驚愕の目で見られたが、グリニッジの気まぐれに振り回されていた日常を伝えるごとに彼の目は呆れと心配に変わり、「よく弟子になれたな」の言葉も違う意味に聞こえるようになっていた。
「最初の年はグリさんが『カロスではクリスマスに魚を食べるんだ、俺達もそれに倣うぞ』とか言い出して海鮮料理の高級店に連れてかれたな。まあ、こういう日に魚も悪くないって思ったね。その次の年は泊まったホテルのレストランで食べたんだが、ホテルのフロントのクリスマスツリーに『俺の方が目立つ』っていきなりグリさんが張り合い出して……」
「やっぱり君の師匠はおかしな奴だ」エリックがため息をつく。「でも思い出話を語る君は楽しそうに見える」
 そこで初めてトレヴァーは自分の顔が緩んでいる事に気付いた。公ではクールでありたい性分故慌てて頬を手で覆ってみせるが、向かい側のエリックはニヤニヤ笑って唇を動かす。“かわいい”
「……トイレに行ってくる!」
 その場に読唇術ができる相手がいたらどうしてくれるんだ、という言葉が喉の奥で詰まったかわりに、無理やり別な言葉で空気を吐き出して立ち上がる。これは戦略的撤退だ、まだ彼に負けを認めてはいない。戻ってきた暁には別な話題で打ち負かしてやるんだ。
 こうしてテーブルというテーブルで埋め尽くされた通路をスイと往復し、いかにエリックを言いくるめてやろうかを考えながら数分でトイレから戻ったトレヴァーが見たものは、漆黒の闇に光る極彩色のイルミネーションの景色を窓越しに眺めるエリックの姿だった。ガラスに映ったエリックの顔は確かに窓の方を向いている。しかし目はぼんやりと周囲を捉えているだけに過ぎず、刹那に考え事をしている姿だとトレヴァーは見抜く。ガラスにトレヴァーが映ってもこちらに気付く素振りはなく、席に座っても同様だった。
 時々エリックはこうして何かを考え込む時がある、というのは彼と付き合ってから知った事だ。思えば彼の積年の想いを知る前からそんな姿を見てきた気がする。まだ恋人同士じゃなかったクリスマスシーズンの時期、この街でエリックと出会った時も空を見上げて同じような表情をしていた時があった。
『愛と幸せを分かち合おうなんて、幸せは分かるが愛なんて誰と分かち合うんだろうな』
 今のエリックと何ら変わりない、詩人らしい思慮深さと一抹の寂しさを感じさせる表情。彼はまた似たような事柄に思想を巡らせているというのだろうか?そんなエリックを見る度に真意を探ろうとするトレヴァーの姿勢も変わらない。心の距離が縮まった今はその理由を掴める日も増えたが、今回は混沌しか見えない。魔法使いの身でありながら、相手の心を読む魔法を持ち合わせていない現実がもどかしい。
「エリック、おーい。戻ったぞ」
「……ああ!? いつの間に」
「さっきからずっといた。偉大なる詩人様は今夜は何について思案していたんだ?」
 先程トレヴァーをからかっていたエリックは目の前にいなかった。強気に振る舞おうとしているつもりでも繊細な部分が滲み出ている、そんな雰囲気がトレヴァーにも伝わっている中で彼は何を語るのか。トレヴァーの方を向いていたエリックが再び窓越しに視線を移す。
「毎年同じクリスマスが繰り返される訳が無い、って事を」
「というと?」トレヴァーが身を乗り出したのは、エリックの声が周囲のざわめきにかき消されるくらい小さいものだったからだ。
「僕らはまだクリスマス当日にはそれぞれの家族や親戚の元で過ごしている。でもいつの日かそうならない日が来ると思うんだ。いつになるかは分からないけど……」
 窓越しと周囲をちらちらと見ながら、トレヴァーだけにぽつりぽつりと呟くエリックに、トレヴァーは何かが分かりかけてきた気がする。例えるなら八割程出来上がったパズルのピースがもう少しで埋まるような、そんな感覚にますますトレヴァーは身を乗り出す。
「もしそんな時が来たら、君はどう思う?」
「それは……」
 トレヴァーもつられて声を潜めたタイミングだった。精一杯の小声がウェイターの「お待たせしました」の声と重なり、エリックと同時にハッとする。立て続けに目の前のウェイターの手からテーブルにクラムチャウダーと前菜のサラダが置かれ、カチャリという微かな音と共にカトラリーの入ったケースが置かれる。鳴り響く目覚まし時計でかき消される夢の世界のように、エリックの憂を帯びた雰囲気は一瞬にして消え失せ、トレヴァーも慌てて席に着く。
「あっやっと来たか! 食べるぞトレヴァー」
 ご飯を待ち侘びていたジャストタイミングで両者の腹の鳴る音も響く。今やトレヴァーの目の前にいるエリックは思慮深さの欠片もない、ご飯を目にした無邪気な青年であり、トレヴァーもまた冷静に振る舞っているものの、空腹に勝てない存在と化していた。当然湿っぽい空気は消え失せ、最後のデザートを食べ尽くすまでに交わされた会話もまた勝ち気なエリックとクールなトレヴァーによる他愛のない話題の数々に終わった。
 変わった事といえば一つある。デザートのビターチョコケーキを食べている時に外では雪が降り始め、真っ暗闇の中を照明とイルミネーションに照らされた白い雪がロマンチックな程度に舞う様子にエリックがケーキそっちのけで目を輝かせたのだった。
 雨は大嫌いだが雪は悪くない。窓の外に釘付けになるエリックに続き、トレヴァーもワインを飲み干して外の景色を眺める。そこに広がっていたのは降り頻る雪景色の中で通りの出店が撤収作業を始めている光景で、それは一晩中お祭り騒ぎとまではいかないクリスマスマーケットの営業時間が終わりに差し掛かっている事を意味していた。

 

「少し街から離れないか」
 どちらが先に言い出したかはあやふやなまま、レストランを出たトレヴァーとエリックの足は自然と通りを抜け、八番道路まで来ていた。賑やかだった街はクリスマスマーケットの営業終了と共にいかにも夜の街らしい静けさに包まれ、僅かな通行人とぽつぽつと街灯や建物からの光が辺りを照らす様相も、過剰なまでにイルミネーションが輝いていた時間帯と比較すれば寂しさが込み上げる。
 腹ごなしも兼ねて歩く事数十分、辿り着いた場所では「湯けむり小径」と書かれた看板とその前に立つ男二人を照らす街灯だけが唯一の灯りだった。街の明かりは遥か遠くにあり、先程までいた場所が伝説にある常若の国くらいの存在に見えてくるからトレヴァーは不思議な感覚に陥る。キルクスの街にはもう数十年程立ち入ってないような、そんな感覚だ。
 傘をさす必要もない雪が樺色のマフラーとネイビーブルーのコートを白く彩る。何故誰もいない静かな場所へ行く事になったのか、実の所トレヴァーは分かっているようで分かっていない。なんとなくノリで街から離れたくなり、無意識に動く足に身を任せていたらここにいた。ただ「喧騒から離れたい」と思ったのは確かで、横を歩くエリックも心なしかそう思っているように見えた。あくまでトレヴァーの観察眼と推測によるものだが。
「この場所で脱げと言われたら脱いでも構わないけど」
「馬鹿、飲み過ぎだ」エリックがトレヴァーの背中を叩く。
「冗談に決まってる、ワインは嗜む程度にしか飲んでない」
 ほのおタイプでも凍えるぞ、と看板に寄りかかるエリックの声色は柔らかい。どこまでも目の前の相手を気にかけて、愛してくれている顔。公には隠している、トレヴァーしか見る事ができない顔だ。エリックの笑みにトレヴァーは今すぐ厳格な父親を説き伏せて公に関係を打ち明け、どんな場所でも見せられる未来が来れば良いのに、という思いと俺以外に見せてほしくない思いで暫く葛藤する。
「エリックが来たいと思った場所なんじゃないのか?」
「君だって静かな場所へ行きたがっていたように見えた。まあ、僕達の考えが一致したんだろうな」
 レストランを出てからどちらからともなく発した一言以外、ここに来るまで会話は交わさなかった。言葉がなくても通じ合える仲になっているという事だろうか、突如心臓の音が、振動が骨伝いにトレヴァーの鼓膜に伝わり始める。ワインの火照りが時間差で効いてきたのもあるのだろうという事にして咄嗟に明かりが届く範囲の周囲に目を向ける。少し歩けば石橋にたどり着く場所だが、明かりが照らす範囲に限定すれば針葉樹と草むらと自分達以外には何も無い場所に見えた。
「僕は……こういう場所でないと渡せないと思ってさ。こっちを向いてくれないか」
 その言葉に何と返事をしたかトレヴァーは把握できなかった。ああ、と普段通りに返したか、声にならない声を上げたか。声帯が震えた感覚と相変わらず高鳴る心臓を抱えてエリックの方を振り向けば、エリックは看板から腰を上げ、まっすぐな姿勢で薄紫色の手のひらほどの大きさの小箱を差し出していた。「メリークリスマス」
「それなら」トレヴァーも鞄に手を突っ込んだのは反射的だった。照れ隠しも兼ねて二つの紙袋を取り出す。「クリスマスにはまだ早いけど」
 束の間、互いの手が手袋越しに触れ合った。小箱はトレヴァーの元へ、紙袋はエリックの元へと行き渡る。今年はもういつ会えるか分からない、示し合わせていなくても息は驚くほどに合った。
「トレヴァーも用意していたのか」
「ここで渡さなかったら、春の君の誕生日まで持ち越しになるからな。今開けても?」
「今開けてくれ」
 その声は極めて真剣で改まったものだった。日頃あまり見ないエリックの強い眼差しにも気圧されつつ、トレヴァーはリボンを解き、シールを剥がす。この贈り物に人生でも賭けているのか、或いは何がなんでも感想を聞き出そうとしているのか。おそらくその答えが両方ではないかと結論付けるに至ったのは、小箱に行儀よく収められたクラバットピンと目が合ったからだった。
「なあ、これって……」
 爪より小さな赤い宝石で作られたそれは、小さくてもカジッチュの形状をしているのは明らかだった。甘酸っぱい噂話から始まったジンクスが有名な土地の住民がカジッチュを模した贈り物を見て、その意味を汲み取れない者は殆どいない。それでもとうの昔に恋仲にあるのだから今更、とトレヴァーは確認するように首を傾げてみせる。
「知りたいよな」エリックは既に答えを用意していた。「思い出してみろ、僕達は告白から始まった仲か?」
「俺の感覚だと、君に酔いを介抱してもらった礼を言いに行った時にキスされたのが始まりだが」
「僕としてはその後の、君が答えを言いに来た時だ。その時キスはあったが『付き合ってください』の一言はあったか?」
「あー……」
 即座に頭を巡らせる。エリックに自分の気持ちを打ち明けた時は殆ど成り行きと勢いに任せており、覚えている事といえば押し付けられた壁の感触、彼の唇の冷たさと温かさ、唾液が絡み合う音、その先の更に先を想像して高まる体の熱しかない。言葉を交わしたのは辛うじて覚えている事であり、内容までは思い出せなかった。
「そういう事を言われていたら、俺でも覚えているだろうしな」
「そうだ、だから改めて言いたい」
 エリックがトレヴァーの右手を優しく握る。互いに手袋をしているにも関わらず、革を通じて彼の手の感触が蘇ってくるようでトレヴァーは心臓をギュッと掴まれたような心地になり、思わず目の前から目を逸らしたくなったが、エリックの真剣でいてふわりとした笑みを見るとそこに視線が吸い込まれてしまう。悔しいが、俺はエリックに敵わない部分もある。
「君を愛している、この世の誰よりも。どうか僕と付き合ってほしい」
 トレヴァーはすぐに言葉を返せなかった。心臓がうるさすぎる程に鼓動を打つ。今口を開ければ心臓どころか内臓が飛び出しそうで、口を閉じるのに必死だった。街頭の明かりで煌めく翡翠の瞳を、あまりにもストレートに突きつけられた言葉を生涯忘れる事はないだろう。美しい風景、という世界中の綺麗な風景写真を集めた写真集を読んだ事があるが、そんな本より目の前の景色はどこまでも澄んで美しかった。心の底から美しいものを見ると言葉というものを失うのだ。それなのに感情は噴火寸前の火山のように煮えたぎり、行き場を求めて体中を駆け巡っている。この気持ちをどう表現すれば良いだろう?
「トレヴァー……泣いているのか?」
「えっ」反射的に違う、と言葉が出そうになってハッとする。そこで初めてトレヴァーは両目の湿っぽさに気付き、その上で小箱を手にした左腕で乱暴に目を擦る。「まさか」
 昔から人前で涙を見せるなと教え込まれている。それが次期当主たる存在だと体に刻み込まれて今に至っているが、次期当主の座を従兄弟に譲った今、その教えについてはあまり考えなくても良いのかもしれない。第一今より関係が進展する前から既にトレヴァーはエリックの胸の中で泣き腫らした事があるため今更な話だが、それでもプライドに傷がつけられるのは嫌だった。
 震える右手に力を込め、再び手を潰さない程度に握り返してまっすぐトレヴァーはエリックの目を見る。一度声を出してしまえば、言葉を紡ぐのは容易だった。
「……俺もだ。俺は君が思うほど完璧な存在じゃないと思うが、それでも君と一生一緒にいたい」
「完璧?」一生懸命考えた拙い返事にエリックは一瞬キョトンとし、そしてニヤリと笑った。「そんなのずっと前から分かっている、僕はそんな君が好きなんだ」
 それ以上の言葉は要らなかった。まだ伝えきれない感情が溢れ出るまま、トレヴァーはエリックに抱きつき、吐息がかかるより前にその口に想いをねじ込むが如く塞いでやる。そのまま両腕をエリックのうなじにかけ、体と体が密着する。相変わらず彼の口は冷たい。それが他ならぬ自分の熱で温まる過程がトレヴァーは何よりも好きだった。ほのおタイプとこおりタイプという相反する属性でも、熱を分かち合う事ができるのを彼との触れ合いで知ったし、その行為がいかに多幸感に包まれるかを教えてくれたのもエリックだった。今いる場所が寒くても関係ない、トレヴァーの目の前にあるのは自分の熱とエリックの冷たさだけだった。
 普段はエリック側から絡ませてくる舌も、今日は勢いのままトレヴァー側から差し出す。いつもと違う動きに流石のエリックも一瞬目を瞬くも、すんなり要求に応じてくれた。
 いつだって彼とのキスは甘くて柔らかくて、デザートのように狂おしく甘美だ。甘いものが苦手なトレヴァーだが、この甘さだけは永遠に味わっていたいと本気で思えてくる。そして今もまた、馬鹿みたいに甘くて蕩ける液体の味に体の力が抜けてくる。それが攻守交代の合図だった。即座に腰をエリックに支えられ、彼側からリードするキスへと変わる。エリックの瞳に映る恍惚とした表情を浮かべる自分と目が合い、トレヴァーは一層目を細める。彼の感情が流れ込む感覚がたまらなく心地よくて、一層夢中になって貪るうちに酸素が足りなくなるのを感じ始める。エリックから愛を与えられるといつも自分という存在を見失いかける。名前も立場も一切を忘れ、ここが何処なのかすら思い出せなくなるが、それでいいと囁く声が心の中から聞こえてくる気がした。いつしかそのままエリックと溶け合い、一つになっても良いかもしれない。もう一つの属性は同じむしタイプだ、同じ虫同士、どうにでもなる。
 もう少しで思考が自分の中から吹き飛ぶ寸前にトレヴァーはぷはっとエリックから唇を離し、肩を上下させながら息を吸い込む。結局甘い誘惑より生存本能が勝るのだ。このままキスしていたい願望は無意識の行動に打ち消され、少しずつ現実が見えてくる。先ほどより数ミリ積もった白い地面、うっとりとした中に笑みをたたえたエリック。
「本当、僕のことが好きなんだな」
 そうだ、まだ伝えていない事があったじゃないか。息を整えるとエリックの肩に頭を預けて囁くように口を開く。
「レストランでの話の続きをしたい」エリックが周囲に悟られないように言葉を選んでいたのは分かっていた。「俺も君と同じ気持ちだ。一緒の家に住んで、リビングで肩を寄せ合ってクリスマスを祝うなんてこれ以上の幸せは思いつかない。今はまだ夢物語に片足を突っ込んでいるが、君となら乗り越えられそうな気がする」
「気がするだって? 僕は君といれば突っ込んだ片足を引き摺り出せるって信じているけどな。君の父親の事だって、他の問題だって、きっと全てが上手くいく」
 腰に回された手の感触が一層近くに感じる。エリックの根拠のない自信はどこから来るのだろう、自分には無いものが羨ましくて、でもそんな彼が大好きで、不思議とトレヴァーも未来が明るくなったような気がして抱きしめている腕の力を少しだけ強める。
 そのまま二人は暫くの間互いの温もりを感じ続けていた。この時間が永遠に続けば良い、トレヴァーはうっとりとした心地でぼんやりと思いに耽っていたが、そのうちエリックがトレヴァーの贈り物を確認していない事を思い出し、夢のような時間はふわりと終わりを告げた。
「感想をもらってばかりじゃ悪いしな、君の贈り物も開けて良いか?」
「是非」
 トレヴァーも目の前で開けてほしいと強く願っていた。その気持ちを汲むようにエリックは紙袋の一つを開け、ぱっと目を輝かせる。
「良いデザインのブックカバーだな! どこで手に入れたんだ?」
「君の知らないところ、もっと言えば国外さ。中々良い革製のやつだろう?」
「最高だ」
 欲しかったおもちゃを手に入れた子供のようにブックカバーを抱きしめるエリックの姿だけで、トレヴァーは心が満ち足りそうになったがまだもう一つが残っている。ここまでは想定内だ、果たしてもう一つを見たところで彼はどんな反応をしてくれるか、エリックから炉のようだと褒められた瞳が輝く。
「もう一つも開けてほしいな」
「そうだった」
 残った紙袋はブックカバーの入っていた方より小さく薄い。袋を開けながら金券かなと冗談めかされるのも宜なるかなと感じつつ、見守るトレヴァーの視界に入ったのは呆然とした面立ちでカジッチュが彫られた金細工のブックマーカーを眺めるエリックの姿だった。
 普段から本を読むエリックに使ってほしいのは勿論、トレヴァーもエリックと全く同じことを考えていたのだ。クリスマスという時期だからこそ、相手に想いを伝えたい。出会いをやり直したいとは言わないが、せめて正式な告白だけはしたかった。まさか先にやられるとは完全に予想外だったのだが。エリックの顔が変わるより前にトレヴァーは笑みを隠せなかった。
「先手を打たれては仕方ないが、俺だってその顔が見たくてたまらなかったんだ」
「君ってやつは!」エリックが両手を広げて抱きついてくる。「僕たちは実に単純だな!」
 体幹が強いと言えど、突然の事態への対応は難しい。先ほどよりも強く抱きしめられてトレヴァーは為す術がなかった。わっと声をあげる間も無くそのままバランスを崩し、エリックを巻き添えにして柔らかい土の上に倒れ込むと、最初は何が起こったのか目を白黒とさせ、やっと頭が回り始めたところで耳元でエリックが豪快とも言えるくらいに大笑いしている声が入った。
「そうだな、俺達はどこまでも単純だ」
 コートに雪や土汚れがついた事や、顔を覆う雪の冷たさは頭に入ってこなかった。やがてエリックが笑う空間にトレヴァーの笑い声も加わり、顔をくしゃっとさせた青年達の声は明かりよりも遠い暗闇へと響き渡っていった。

 

 米粒ほどの明かりの点々が視界に入り、トレヴァーはマフラーの隙間から白いため息をついた。街の光はプレゼントを贈り合う為に八番道路まで歩いた時より数が減っており、街全体が微睡についているようだった。そこへ戻るだけなのに、足取りが重い。
 確かに雪は降り積もっているが、足首までしか積もっていない状態で、足を取られている訳ではない。サクサクと軽やかに雪を踏み締めるエリックの足取りから一、二歩下がったところで歩を進めるトレヴァーの視線は彼の足跡に向く。自分とほぼ同じくらいの大きさの足に向かって気付けば寂しい、と小さく声が漏れ出ていた。
 この夜が終わってしまうことがたまらなく辛く、苦しかった。久しぶりに会えたエリックと街中へ入れば、そこで「また来年」と別れる事になるのを考えただけで、胸が締め付けられる想いに駆られる。まだトレヴァーの唇や体にはエリックの冷たい温もりが残っていた。そして懐には彼からの贈り物であるクラバットピンが存在感を示している。楽しい時間の終わりというものは、特別な時間からいつもの時間へ戻る安堵感というものも少なからず生まれるものだが、それ以上にトレヴァーは名残惜しさで押し潰されそうになり、思わずエリックの足跡に自分の足を重ねて歩く。
 無言の時間が続いていた。道路まで来た時と同様にまたどちらかが「帰ろうか」と言い出して、そこから今に至るまで言葉を交わしていない。トレヴァーの先を行くエリックも、後ろ姿だけしか見えない中で表情を探ることはできない。彼はもう「いつもの時間」に戻ろうとしているのだろうか?
 そのうち互いの足音が物悲しい響きとなってトレヴァーの耳に入ってくる。目の前にエリックがいるはずなのに、彼がはるか先を歩いているような錯覚に陥り、足取りが遅まる。限界だった。このまま彼が遠くへ行きそうな気がする、と考えた瞬間その場から足音の一つが消えた。もう一つの足音は暫く雪を踏み締めて、イレギュラーに気付いたところで止まる。
「トレヴァー?」
 何一つ物音がしなくなった雪道でエリックが振り返る。トレヴァーはエリックの顔を見られなかった。寂しさが増さないよう、雪についた彼の痕跡からも目を逸らし、ぎゅっと両手で拳を握る。言葉は思いつくのに口に出せない。欲望を押し込めて振る舞うことを幼少から教え込まれたのは弊害か美徳か、と無関係な話題で思考回路を一通り温めたところで、ふうっと息を吐く。彼の前では何もかもを曝け出しても良いはずだ、と幼少のしきたりを遮るように頭の中で声がした。
「エリック、その……」
 一層握り拳が固くなる。意を決して上目遣いになりながら目の前を見上げれば、いつもの調子で雪の上に立つエリックがいた。急かす素振りは無いが、君の言葉は聞き漏らすまいと待ち続ける姿に「ゆっくりで良い」と言われている気がして、少しだけ表情を緩める。後はどうにでもなれ。
「帰らないでくれ」深夜の雪道に声が響いた。「君と一緒にいたい。一晩中、具体的には明日の朝まで……今日は離れたくない」
 そして視線がまた足元に向く。体中がかっと熱くなり、マフラーとコートを脱ぎ捨てたくなる衝動と目頭の熱さに襲われそうになって拳だけでなく全身に力を込める。そうしないと今の自分が何をしでかすかいよいよ分からなくなり始めているから。一昔前の淑女なら失神し、気の弱い性格ならその場で泣き出していたかもしれない。そのどれでもないトレヴァーはその場に立ち尽くす事を選んだ。逃げ出したいかと言われれば曖昧な言葉で返したい状態だが、じっとエリックの反応を待ち、時の流れに全てを任せる。
 暗闇と寒さが覆う中、時間は永遠に感じられた。時間にして数秒しか経っていないのかもしれない、それでもこちらに白い影が歩み寄り、頭をポンポンと軽く撫でられるまでは一切気が抜けなかった。
「言い忘れていたけど、今日は家を出る時にアリバイ工作のきく知り合いの家で夜通しパーティーをすると言ってからここに来たんだ」
 悪かった、と言いつつ目につきそうなくらいに口角を上げるエリックに、トレヴァーは目を丸くするしかなかった。拳から、体からふっと力が抜ける。
「君の泊まっている場所はどこだい?」
 今日だけでキスもハグも全て済ませた筈だったのに、まだ足りないと体が疼く。その疼きを理性で押しとどめようと試みたのは、今度はトレヴァーが勢い余ってエリックを雪の中に押し倒す事になりそうだったからだ。ただでさえ「好き」が溢れて止まらないのだから、今そんな体勢をとれば場所なんて関係なくそれ以上の事に発展しかねない。寒さに強いとは言え、流石のトレヴァーも体を壊す未来が見えてエリックの手を強く──痛いと言われない程度に──握って先導するように彼の前を行く。
「ここからそう遠くない、案内する」
 エリックの手が握り返す感触に顔を綻ばせ、トレヴァーとエリックはそのまま静まり返った街へと入る。飾り付けられたイルミネーションが消えた大きなクリスマスツリーの前を横切りながら、トレヴァーはゆっくり瞬きした。クリスマスは大切な相手と共に過ごす日。今日はクリスマスではないが、この街の雰囲気に託けてそんな相手と一緒にいても良いんじゃないか。
「ところで、明日の朝までで良いのか?」
 民家からの明かりが殆ど消え、電灯だけが照らす夜道を歩きながら、ふとエリックがトレヴァーの方を向いた。トレヴァーが数歩先を行く構図はいつの間にか横並びになっている。
「何の話だ?」
「さっき言った事を忘れたのか? 明日の朝まで一緒にいてほしいって泣きそうな顔で言っていたのに?」
「ああ、あれか……言ったけど泣いてはいないからな」
「てっきり昼とか午後って保険をかけると思ってたんだよ。前に起きられないから耳障りなブツを止めてくれって僕に目覚まし時計を止めさせたのは誰だ?」
「それは君のせいだ、あんな事をされたら誰だってああなる。それにあの時は午前中には起きられたし……」
「信用できないな、君には絶大な信頼を寄せているけど、どんな奴かを把握した上で信じているんだ」
 鼻で笑うエリックに、トレヴァーの負けず嫌いの炎が燃え上がる。甘い雰囲気になっても生来の闘争心が首をもたげるのはマルヤクデという血の気の多い種族に生まれついた運命として受け入れている。
「いや、絶対朝だ。朝に起きてみせる。ホテルの目覚まし時計と自前の目覚まし時計を念入りにかけてな」
「それじゃあ賭けだ」エリックが繋いだ手を大きく振る。「君が翌朝起きられたら、クリスマスマーケットをアグリーセーターで練り歩いても良い」
「それ以降に起きたら?」
「君がそれをやるんだ。無茶な内容じゃないと思うけど?」
「いいね、受けて立つ」トレヴァーの目がきらりと光る。「翌朝を楽しみにしているよ」
 そうして不敵な笑みを浮かべ、再びエリックの数歩先を歩き出す。高揚感に包まれながら思い浮かべるのは明日までの出来事だ。小さなホテルに着き、玄関へ踏み行った後の眩い程の多幸感と興奮と互いの熱で埋め尽くされる夜、朝重い腰を上げて無事に目覚まし時計を止め、エリックに勝ち誇る姿、馬鹿みたいにチープなセーターを着たエリックを鼻で笑いながら、クリスマスマーケットで彼にクリームシチューを奢ってやる昼下がり。
 そこでようやく今夜の宿が見えて目を細める。この先の予定の直近の内容を想像しただけで下腹部が切なく熱を帯びる中、不意に雪を伴ったつむじ風がトレヴァーの髪と頬を撫でて過ぎ去っていった。
「ご機嫌だな」
 後ろに視線をやればエリックもまた同様に目を細めていた。彼もまたこの後の展開を考えながらここまで来ているのか、外見からパッと読むことはできない。それでもトレヴァーは本能で感じ取っていた。風に茶化されたような気がしたのは頭の片隅に置いて、握りしめている手に少しだけ力を込める。
「君も同じ事を考えているみたいだからな」



(2024.12)
CP時間軸のエリトレのクリスマス話です!テーマはタイトル通りの「考えることは同じ」
元々大まかなプロットを決めていたところで、キルクスを舞台にする意味をより一層持たせたくて元ネタのバースの街を調べたところ、クリスマスマーケットが有名だと知ったので意気揚々と取り入れていくスタイル。一度行ってみたいです。

余談だが、この話単体で楽しめるようにしたかったんだが気付けば現在時間軸のクリスマス話ちょっと長い話の要素も入ってしまって……読まなくても問題ない程度ではあると思うので、目を通していただけたらもっと嬉しいという感じです。